【沖矢昴・安室透夢】 Madeira〜琥珀色の姫君〜
第2章 嘘つき
悪い夢なら覚めてほしい。
そう思い、そよ香はシャワーの設定温度を上げる。
頭にかかった湯は右肩の銃創に流れていく。
左手で傷痕に触れると、
あの時の記憶が蘇りそうになった。
「……っ」
どうして私は生まれてきてしまったの…?
シャワーの水が冷たい床を叩きつける音に紛れて
そよ香は涙を流した。
*
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__カラン、
「お疲れ様です」
「そよ香ちゃん悪いね、今日はよろしく」
モーニングのピークを終え、
マスターはランチの仕込みをしていた。
更衣室兼休憩室に向かうと
バイト仲間の梓が早めの昼食を取っている最中だ。
「そよ香ちゃん今日ありがとね!
安室さんの代わりに入ってもらって」
「ううん、どうせ暇だから。大丈夫!」