【沖矢昴・安室透夢】 Madeira〜琥珀色の姫君〜
第2章 嘘つき
「……ん」
カーテンの隙間からチラチラと明かりが差し込み
そよ香の顔を照らす。
「ヤバっ…!!」
勢いよく身体を起こすと
昨日の目眩がわずかに残っていて
廊下の壁にもたれかかる。
今日は安室とポアロのシフトを交代した日。
休むわけにはいかなかった。
ヨタヨタとふらつきながらリビングへ戻り
壁掛け時計を確認すると
まだ午前7時を回ったばかりだ。
(良かった…バイト11時からで…)
カーテンを開けると天気予報は外れていて、
雲の隙間から太陽が顔を出す。
(…今の私には、眩しすぎるよ)
もう一度カーテンを閉めて、薄暗い部屋を見渡す。
いつもと変わらない自分の部屋。
社会人になって、やっと安定した収入をえられるようになり
お気に入りの家具を少しずつ集めて
この生活にも満足していた。
昨日から変わったことと言えば、
25歳の誕生日までは生きられないということ。
(あの男に殺されるのか、それとも…)
頭を大袈裟に振って思考を飛ばす。
「…シャワー浴びよ」