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【沖矢昴・安室透夢】 Madeira〜琥珀色の姫君〜

第2章 嘘つき




「もしもし…」


「探したぜぇ…マデイラ」




忘れるはずがない。

この声は、10年前私を殺そうとした…



「…ジン。何の用?」




嫌な予感ほど当たる。

鼓動が不規則に速くなるのが分かった。

全身の産毛が逆立ち、電話越しとはいえ

男の殺気がこちらにまで伝わってくる。

意識をしっかり保っていなければ、

立っていられない。

ガタガタと震える手足にもはや感覚など無かった。



「お前の25の誕生日…盛大に祝ってやるよ

真っ赤な血しぶきでなぁ!!」



「……っ!!」



10年前、男に撃たれた肩が熱を帯びる。

ドクドクと脈にあわせて痛みが増幅した。



「嬉しくて声も出ねぇってか…

逃がさねぇよ、お前だけはなぁ!!」



心臓を鷲掴みされたような息苦しさに耐えかね

膝から崩れ落ちる。


通話は切れているが、

男の声が、殺気が、脳を支配してくる、



「うぅ……っ!!」




吐き気をもよおし、トイレへ駆け込んだ。

渦を巻いて奥へ奥へと水は流れていく。

私の汚れた過去も全て流してしまいたい…

やっぱりあの時死ねば良かった。



トイレから這いずり、リビングを目指すが

動悸と吐き気で目が回る。

冷え切ったフローリングに身体を預けると、

一瞬のうちに意識を飛ばしてしまった。




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