【沖矢昴・安室透夢】 Madeira〜琥珀色の姫君〜
第2章 嘘つき
「あぁ、貴女はこの前の…
エクレアは美味しかったですか?」
「はい、美味しかったです!
この前はお礼を言いそびれてしまって…
ありがとうございました。
こんなところでお会いできるとは思いませんでした」
自分のことを覚えてくれていたことに安堵し、
そよ香の頬がゆるむ。
男もまた、優しげな笑顔を向ける。
「僕もですよ。
…ところで、美味しいトマトの選び方を
ご存知ありませんか?」
「ト…トマト??」
「えぇ。僕が選ぶとたいてい酸味が強かったり、
少々水っぽかったりとなかなか難しくて…」
そよ香は男に変わって
トマトの入った箱を覗き込む。
綺麗に並べられたトマトは全てヘタが下に、
お尻が上を向いている。
その中から一つを取り出し、
男の前に差し出した。
「このトマト、美味しいと思いますよ」
「ほぅ、それは何故?」