【沖矢昴・安室透夢】 Madeira〜琥珀色の姫君〜
第2章 嘘つき
「お前…まだあそこでバイトしてんのかよ」
「お金がなくて…奨学金返さなきゃならないんですよ」
周りを気にしながら二人でコソコソ話す。
「ここ、副業禁止だし、
あの喫茶店、所長のお気に入りだから気をつけろよ」
「分かってますって…」
田中はそよ香の2年先輩で、
そよ香がポアロでバイトをしている時に
たまたま鉢合わせてしまった。
所長には黙っててやるから、と言い、
合コンしたいから女の子集めてとか、
社内で会うと缶コーヒー奢ってとか、結構面倒くさい。
デスクに戻り、代替機に電話帳だけでも復元しようと
スマホに電源を入れる。
画面がつくその一瞬前に、英字が表示された。
「…extr…?ん?」
読み終わる前に英字は消え、ホーム画面になった。
(…ま、いっか)