【沖矢昴・安室透夢】 Madeira〜琥珀色の姫君〜
第2章 嘘つき
「田中先輩、今お時間よろしいですか?」
「あぁ、春野。どうした?」
そよ香は出社するとすぐに総務の田中を訪ねた。
無論、スマホの電池の件だ。
ポアロで充電してもらってから調子は良いのだが、
また同じ状況になっては困るし、
電池の交換くらいはしてもらおうと思っていた。
「… 春野に貸与してから2年なんだけどな」
「ラベルには2017年取得になってましたから、
寿命じゃないですか?」
「春野の前に2年使ってた人がいるけど、
返却してもらった時に電池交換してもらってるから
電池自体は2年なんだよ」
「そうなんですね」
まぁ、仕事に支障が出ても困るし、
修理依頼だしとくわ
と、田中はそよ香の社用スマホを預かる。
「データはバックアップしてあるよな?
しばらくはこっちのスマホを使ってくれ」
SIMカードを代替機に差し替えてそよ香に渡す。
「ありがとうございます」
「…あ、今度の土曜日飯塚たちと飲むんだけどお前もくるか?」
「いや…その日はバイトなんで遠慮しときます…」
田中の眉間にシワがより、顔をそよ香に近づける。