【沖矢昴・安室透夢】 Madeira〜琥珀色の姫君〜
第12章 君は誰の手に落ちる
(残るはあの眼鏡の男…少しは骨のある奴だと良いが…)
身長も体格もいたって標準
30代前半と言ったところだろうか。
ヘッドセットに手を当てて誰かと話をしているようだ。
男の顔からは緊迫感が感じ取れ、ピリッと張り詰めた空気が漂っているのが分かる。
「A班、状況報告を」
『こちらA班。先ほど赤いスポーツカーが1台登っていきました。
運転手は30代前後の男性、明るい茶髪で眼鏡をかけています』
「了解、確認する。だれか外国人カップルを見たものはいないか……
そうか…いや、何でもない。そろそろターゲットが来る。
各班、よろしく頼む」
通話を終えると、男は山小屋の裏口から中へと入っていく。
沖矢も静かに後を追って中に入った。
靴のまま土間を上がると小さなキッチンがあった。
人ひとりがやっと通れる狭さだ。長年使われていないようで、
シンクの蛇口は錆びつき、戸棚には蜘蛛の巣が張っている。
(ん…?)
公安の男が床にしゃがみ、何かを確認していた。
沖矢は変声機に手をあて声質を変える。
「首尾はどうだ…」
「…!?降谷さん??」
男が振り返ると同時に、沖矢はハンドガンを突きつけた。