【沖矢昴・安室透夢】 Madeira〜琥珀色の姫君〜
第11章 懺悔
コンクリートを走る亀裂が大きくなってきた。
もう5分も持たない。
エレーナはマデイラを抱きながらビルの端まで走り出す。
「飛ぶよ!!」
「えっ!?」
もつれる足を奮い立たせ、前へと踏み出す。
イラついたようにジンは再び引き金を引いた。
ビルの揺れや、二人の走るスピードを予測していたかのように
弾丸はエレーナの足に命中する。
「うあぁぁ…っ!!」
「エレーナさん!!!」
倒れこむ二人にジンがゆっくりと近づいていくと
マデイラは左手で持っていた拳銃をジンに向ける。
「マデイラちゃん…!やめて!!」
エレーナの叫び声はもはや届いていない。
「俺と相打ちしようってのか…?」
不敵な笑みに、凍てつく視線は恐怖を煽る。
マデイラは震える指で引き金を引くが、
ジンは驚くことも焦ることせずにただその場に立っているだけだった。
「…筋はある方かもな」
一発撃っただけなのに、反動で腕がしびれて構えることすらできない。
「これで、終わりだ…」
__パンッ!!
明確な殺意のもとで放たれた弾丸は、
明らかにマデイラの頭を狙っていた。
エレーナは血にまみれた足を引きずりながら、
マデイラの腕を引く。
「……っ!!」
ターゲットの位置がずれ、弾はマデイラの右肩を貫通した。
同時にビルの揺れが増し、いよいよ崩れ落ちる。
粉塵に身を隠すようにして二人はビルから飛び降りた。