【沖矢昴・安室透夢】 Madeira〜琥珀色の姫君〜
第2章 嘘つき
Madeiraは確かに酒の名前だが、
俺が組織にいた頃に聞いた覚えはない。
ポルトガルのマデイラ諸島で作られるワイン。
特殊な製法を用いるマデイラは
不滅に近いほど長寿で、
数百年も前のワインが今もなお美味く飲める。
使われるブドウの品種により
風味はもちろん異なるのだが、
出来上がったワインはどれも似たような色味になり
別名…
「Princess of amber…琥珀色の姫君…か」
一つの仮説が頭の中に煙のように沸き立つ。
「いや、まさかな…」
ジェイムズに報告するのは、まだ、早い…
氷が溶けて薄まったバーボンを
一気に煽ると書斎を後にした。