【沖矢昴・安室透夢】 Madeira〜琥珀色の姫君〜
第11章 懺悔
「マデイラちゃんちょっと待ってて。
電話してくる…」
エレーナはそう言って声の届かないところまでいったん降りると
別の場所で待機している仲間に電話をかけた。
「もしもし…No,11は私と一緒よ…えぇ、でも厚志さんが…
うん……車を高石ビルのそばに……」
スマホを握る手に汗がにじむ。
昨日からずっと心臓の鼓動は早いまま。
この判断が本当に正しいのか、考えても答えは出そうにない。
しかし、これはせめてもの罪滅ぼしだ。
「おまたせ」
マデイラに声をかけると再び階段を昇り始める。
最上階までたどり着くと、エレーナが先にドアを開けた。
2人の視界の先には男の長い銀髪と、
黒いコートの裾が風になびく。
「手間かけさせんじゃねぇよ…お姫サマ…」
タバコを咥えて左手で拳銃を構えるその顔は
まるでゲームを楽しんでいるような笑みさえ浮かべていた。
「この子は渡さない…!薬の研究資料も何もかも!
貴方たちに渡すものですか!!」
「駒に意思はいらねぇ…”そういう薬”だろアレは…」
言い終える前にジンは引き金を引いた。