【沖矢昴・安室透夢】 Madeira〜琥珀色の姫君〜
第11章 懺悔
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「マデイラちゃん、こっち。もうちょっと走れる?」
「うん…」
広い屋敷とはいえ、生まれてからずっと軟禁状態だったマデイラにとって
外を長時間走り続けるのには無理があった。
「厚司さんから連絡があって、あのビルで合流することになってるの。後少しよ」
マデイラは左手に拳銃を、右手にエレーナの手を握って離さない。
繋がれた手は、恐怖か緊張か不安か…二人の気持ちを現すかのように
きつく結ばれたままだ。
薄汚れた廃ビルの中に入り、エレーナはスマホのライトで中を照らす。
物は何もなく、キラキラと塵が反射して光った。
「上まであがっちゃおうか」
足元を照らし、ゆっくりと階段を登っていく。
しばらくして、屋上まであとどのくらいだろうかと
ライトを上に向けた。
視界に映るのは、黒い四角い箱のようなもの。
小さな緑色のランプもついている。
「……!!(まさか、ハメられた…?)」
「…エレーナさん?」
突然立ち止まるエレーナを振り返って見るが、
眼鏡のレンズが光っていて表情は分からない。