【沖矢昴・安室透夢】 Madeira〜琥珀色の姫君〜
第11章 懺悔
「……!?」
風向きが変わり、急にガソリンの匂いが鼻を刺す。
木々の間に目をやると、白煙が上がってるのが見えた。
エレーナがそれに気づいて走り出すと、二人も後へ続く。
「そ…そんな……」
ガシャン!とフェンスを力強く握りしめるエレーナの前には
逃走用に用意してあった1台の車が炎上していた。
「おい、待てよ。ネズミ共」
どこからか、感情のない冷えた声がする。
車から出る白煙と、生い茂った草木のせいで満足に辺りが見えない。
「二人とも、俺の後ろに下がれ!」
厚司がそう叫ぶと、パン!と銃声の音が鳴った。
「ぐぁぁっ!!!」
同時に呻き声が聞こえてくると厚司はその場に倒れ込む。
「厚司さん!!!」
彼の右足は赤黒い血でみるみるうちに汚れていく。
瞬く間にその面積が広がってくると、マデイラはもう見ていられなくなった。
「エレーナ…行け…!仲間がいるエリアCに行くんだ…!」
「……!」
「行け!早く……!!!」
エレーナは胃の焼けるような怒りを感じながら、
マデイラの右腕を強引に掴むと、フェンスの扉を開けて走り出した。