【沖矢昴・安室透夢】 Madeira〜琥珀色の姫君〜
第11章 懺悔
病気で透析が必要な患者、白血病などの血液の病気を持つ患者、
はたまた手術や交通事故などで大量出血をしてしまった患者…
そういった人々のためにマデイラという存在を作る必要がある、
これは「人助け」なのだ…と、その言葉を信じて疑わなかった。
エレーナは一度涙を拭うと、覚悟を決めたような顔で続けた。
「あなたはこれ以上、ここにいてはいけない」
「ど…どうして……?」
エレーナは返事に困っているように見えた。
今更本当のことを言って、何になるというのだ。
自分たちがしてきた悪魔の研究…この子にはなんの罪もない。
その罪を生み出してしまったのは私たちだと言うのに……
深く、長いため息をついた後
エレーナはマデイラを抱きしめた。
母親の温もりは知らないが、もし自分にも母親がいたのなら
エレーナのような、優しく愛に溢れた女性だったと信じたい。
「1秒でも長く、生きていてほしい……」
エレーナはマデイラを抱きしめたまま、
烏丸グループの真の目的を話し始めた。
言葉一つひとつを丁寧に選んでいるようだったが
その内容はとても残酷で、冷酷で、
突然重くのしかかった業はマデイラの存在自体を否定するようなものだった。