【沖矢昴・安室透夢】 Madeira〜琥珀色の姫君〜
第11章 懺悔
ぎょっとした顔で慌てるマデイラの前で
エレーナは膝から崩れ落ちると目の前にある小さな両手を握る。
「ごめんなさい…私…うぅん、“私たち”は……」
それからはエレーナは、まるで自らの罪を告白するかのように
静かな口調で語り始めた。
マデイラが生まれたのは24年前の秋のことだった。
組織の研究施設で作られた1つの受精卵は、
琥珀色に輝く細胞を持ち、多くの女性を犠牲にして作られたものだった。
その受精卵は羊水を模した液体の入ったカプセルの中で育ち、
やがてヒトの形になっていくと40週前後で外へ出てくることができた。
これが、マデイラ誕生の瞬間だ。
母親などいない、顔も名前も、温もりさえ知らない。
マデイラの顔立ちはアジア人によく似ていたからその辺りだろう。
生物学上でいう父親は組織内で “あの方” と呼ばれている人ではないか
というのがもっぱら研究員の間では噂になっていた。
なぜマデイラがこの世に生み出されてしまったのか。
宮野厚司、エレーナ夫妻はこの研究について「烏丸グループ最大の社会貢献」と説明されていた。
Golden blood は世界の人々を救うのだと。