【沖矢昴・安室透夢】 Madeira〜琥珀色の姫君〜
第11章 懺悔
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__コンコン、
「マデイラちゃん、いる?エレーナよ」
「開いてるよ!」
緻密な金の装飾が施されたドアノブを回し、エレーナが中に入る。
南側の大きな窓には白樺の窓枠がはめられており、
その近くには少女1人が眠るには広すぎる
クイーンサイズのベッドが堂々と置かれていた。
シルクとレースの天蓋がついたそのベッドに
マデイラは腰をかけている。
エレーナがベッドに近づいていくと、
「はい、どうぞ」と言ってネグリジェの袖をまくった。
漂白されたような真っ白い肌には、
小さな青あざがいくつも残っている、
「………」
いつもならすぐサイドテーブルに消毒液やコットン、
注射器を用意し始めるエレーナの様子がおかしい。
マデイラの目の前に立ったまま、微動だにしないのだ。
そういえば、いつも持っているボストンバッグも今日はない。
「…エレーナ、さん?」
訝しげに見上げると、
爽やかなシトラスグリーンの瞳から一粒、二粒と涙が流れる。
「マデイラちゃん……ごめんね…」
「エレーナさん!?どうしたの?」