【沖矢昴・安室透夢】 Madeira〜琥珀色の姫君〜
第2章 嘘つき
書斎というには広すぎるこの部屋。
足元から天井に届くほどの大きな本棚が
壁面いっぱいに並んでいる。
小さな子供でも手の届く場所に、
背表紙の擦り切れた本があった。
『シャーロックホームズ』と題されたその本は
あの坊やのお気に入りだろう。
気分転換に本でも読もうと、
綺麗に並べられた本を眺めてみる。
「遺伝子工学…」
推理小説作家の工藤優作氏の書斎には
さまざまなジャンルの本があり、驚かされる。
下手な本屋より品揃えが良い。
ミステリーとはかけ離れたように見えるこの本も
優作氏にとっては小説のネタになるのだろう。
「…そういえば」
遺伝子工学の本を手に取ったまま、
PCの画面を操作する。
ジェイムズから送られてきた
資料のデータファイルを開いた。
ジョディが見つけたという
“Madeira”の筆圧の跡が残る資料だ。
1ページ目には、
No,1 GM:○
という表記が、No,10まで続いていた。
「GM…まさか genetic modification…
遺伝子組み換えのことか…?」
2ページ目には
No,11 GM:
○とも×とも書かれていない、空白だった。