【沖矢昴・安室透夢】 Madeira〜琥珀色の姫君〜
第11章 懺悔
足音が近づいてくるのに、身体は動かない。
ドアノブを掴むそよ香の手に、一回り大きな沖矢の右手が重なる。
左腕はそよ香の腰を後ろから引き寄せると、
あっという間に抱きしめられる形になった。
沖矢の優しげなココアブラウンの髪が少しだけ視界に入る。
「この家にいる限り、君の命は保障しますよ…」
耳元で囁かれると何もかも手放したくなってしまう。
そんな諦めにも似た感情が湧き上がってくるが、
そよ香は振り返らない。
ドクン、ドクン…と、心臓は生きていることを主張するかのように強く波打つ。
この扉の向こうはハッピーエンドか、バッドエンドか。
今はただ、歩を進めるしか道はない。
「離して……」
そよ香がそう言うと、沖矢は素直に身体を遠ざけた。
そのままドアノブをひねり外に出ていくと、
沖矢は扉が閉じる間際に言った。
「どうか、お気をつけて…」
*
*
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バーボンとの約束の5分前、米花駅のロータリーにつくと
見慣れた白いスポーツカーが停まっている。
近づくと助手席のドアが少し開く。
何度も乗っているはずなのに、今日はやけにドアが重く感じた。