【沖矢昴・安室透夢】 Madeira〜琥珀色の姫君〜
第10章 それぞれの陰謀
「遺伝子組み換え、黄金の血、ジン、ベルモット
バーボン…」
よくできたレポートだった。
こんなに私のことを細かく調べられるなんて…
出生地が改ざんされていることも全部知っている。
あれはあの人が私のために……
…とにかくここを出なきゃ。
沖矢さんが私をここに置いた理由は…
奴らの仲間だったからなの…?
「そよ香さん、どうされました?こんなところで…
おや、見られてしまいましたか…」
しまった。
レポートに夢中で沖矢さんが帰ってきたことに気が付かなかった。
「…感心しませんね。僕の大事な資料を勝手に見るなんて…」
一歩ずつ近づいてくるたびに
心臓が痛いほど跳ねる。
逃げなきゃ、と思うほどに足がすくんで動かない。
「……っ!!」
眼鏡の奥から、オリーブグリーンの瞳がこちらを睨むと
立っていられなくなった。
「おっと…大丈夫ですか?
そんなに怯えなくても…」
崩れそうになった私の腰に腕を回して支える。
もう片方の手で頬を撫でられると顔を上に向かされた。
「私のこと…知ってるの?」
「えぇ、知っていますよ。昔から…」