【沖矢昴・安室透夢】 Madeira〜琥珀色の姫君〜
第10章 それぞれの陰謀
何故だろう
沖矢さんには自分のことを話してしまいたくなる。
彼の言う通り、私は期待しているのかな。
でも彼に一体何ができると言うの?
ただの、大学院生に…
工藤先生の書斎は大抵沖矢さんが論文の執筆のために使っていた。
日本中、いや世界中の本が集まっているこの書斎は
まるで図書館だ。
小説家だから、いろいろな作家の小説が置いてあるのかと思いきや
漫画、歴史書、詩集、ビジネス書、動植物図鑑…
ありとあらゆるカテゴリーの本が並んでいた。
書斎に入るといつも沖矢さんが論文を書いているテーブルの床に
紙が散らばっているのが見えた。
「ん?」
テーブルの上にはノートパソコンや本、ファイリングされた資料が
開きっぱなしで放置されている。
「……!これ、私…!?」
資料の表紙には『Report of Madeira』の文字と共に
私の顔写真がクリップで止めてあった。
なんで?どうして沖矢さんがこんなものを?
レポートをめくる手が止まらない。
英語で書かれていて、全部を読むことも理解することもできないけど、
重要と思われる単語には下線が引いてあった。