【沖矢昴・安室透夢】 Madeira〜琥珀色の姫君〜
第2章 嘘つき
__ピコン
スマホに通知が入る。
あの女に取り付けた発信機が
どの道を移動したかの経路が映し出された。
(…不自然に迂回しているな。
安室君も一緒だったようだし、気づかれていたか…
まぁ、住居は最初に停車したこのマンションだろうが…)
ジェイムズにMadeiraのことを聞いてから
いろいろと調べてはみたが、
有力な手がかりは掴めないでいた。
最近安室君と親しくしている女…
そよ香と言ったか。
少し気になったのでコンビニで接触してみたが、
まぁこれといって怪しい様子はない。
春野そよ香、24歳。
静岡県東部出身。
高校までは地元の公立校へ通い、大学入学を機に上京。
東栄大学法学部法学科を卒業後
澤木税理士事務所へ就職。
約1年前から毛利探偵事務所を担当し、坊やたちと親しくなる。
平日の仕事終わりや休日に喫茶ポアロにてアルバイト…
そよ香の情報がまとめられた資料を
バサッと机の上に投げる。
「…アタリには程遠いが、
ハズレという確証もまだない…」
カラン、とウィスキーグラスに入れた氷が音を立てた。