【沖矢昴・安室透夢】 Madeira〜琥珀色の姫君〜
第10章 それぞれの陰謀
タバコの灰がテーブルに落ちるが、気にするそぶりも見せない。
「男のジェラシーほど見苦しいものはないわよ、ジン」
「口の減らねぇ女だな…10年前に殺っとけばよかったぜ。
アイツらに邪魔されなきゃ…」
べルモットはシルバーのスパンコールが煌めくイブニングバッグから
5mmの細いタバコを出すと、ジンにシガーキスをねだる。
ジンは心底面倒くさそうな表情をしながらも、
少しだけ顔を向けた。
2人の咥えるタバコの煙が重なる。
溜息をつくように煙を吐き出すとベルモットの眉がひそむ。
「No,11を生きたまま捕まえるのがあの方のご命令よ…」
「フン、手元が狂っちまったらどうしようもねぇ…
アレはどうせ裏切り者だ。シェリーと同じ…」
「貴方が殺らなくたって、寿命のフィニッシュテープはもう見えているんだから良いじゃない」
「フィニッシュテープか…
テメェはどうやらそれを取っ払っちまっているようだが…」
「…ジン」
たしなめるように言うと、
ベルモットはテーブルの下で細く長い脚をジンに絡めた。