【沖矢昴・安室透夢】 Madeira〜琥珀色の姫君〜
第10章 それぞれの陰謀
「俺を待たせるとはいい度胸だな…ベルモット」
黒い帽子を目深にかぶった銀髪の男は
開口一番に言った。
「久しぶりにあなたからデートのお誘いがあったから…
支度に時間がかかったのよ…ジン」
はぁ、とため息をつくとジンはワイングラスに入った
琥珀色の酒を一気に煽った。
2人の会話を隣で聞いていたサングラスの大柄な男が席を立つ。
「じゃぁ…オレはこれで。兄貴、車で待ってます…」
「…いや、今日はもう帰れ。ウォッカ」
その言葉の意味が分かったのか
色気をまとい、バーガンディのルージュが引かれた彼女の唇は熱くなる。
「良いんですかい?」
「二度は言わねぇ…」
帽子の陰から殺意をも思わせるように睨むと
ウォッカは慌てて部屋を出ていった。
入れ替わりにウェイタ―が部屋へ入ってくると
ヴェルモットの前にマティーニを置く。
「お連れ様からです」
「…あら、あなたにこんなことできるのね…」
ジンはその言葉に被せるようにしてタバコに火をつけた。
ウェイターが部屋を出るのを確認すると口を開く。
「…で、No,11はどうなった」
「3日後、バーボンがあの場所に連れてくるわ」
「気に入らねぇな…」