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【沖矢昴・安室透夢】 Madeira〜琥珀色の姫君〜

第9章 渡さない*













「そよ香、そろそろ服を整えたほうが良い…」



ふわり、と頭を撫でられる感覚で目が覚めた。

どうやら泣き疲れて寝てしまっていたようだ。

まぶたが重く、少しだけ熱を持っている。




「ほら、これで冷やすと良い」


「…優しくしないで。今はどっちなの?」




ハンカチに包まれた保冷剤を受け取ることはせず、

そよ香は強めに言う。





「今は…どちらでもない。

そよ香、本当に僕のこと覚えていないのか…」


「…どういう意味?」




ベッドから気だるい身体を起こすと、

男の腕が伸びてくる。




「……!」




また何かされるのでは、と身体を硬直させて身構えるが

程よく筋肉のついた逞しい腕で

優しく抱きしめられただけだった。



頬をすり寄せ、二人の静かな呼吸が重なる距離に

そよ香は戸惑う。

安室とも、バーボンとも違うその雰囲気の男は

耳元で何かを囁いた。





「……」



「……君を迎えにアイツがもうすぐ来ます」




身なりを整え、ハンガーにかかっていたジャケットを羽織ると

ちょうどインターフォンのチャイムが鳴った。





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