【沖矢昴・安室透夢】 Madeira〜琥珀色の姫君〜
第9章 渡さない*
「……Shit!」
壁を拳で殴りつけるが、痛みなど分からないほどに
頭に血が上っているらしい。
スマホの向こうでキャメルが状況を説明しているのを聞いても
右から左に流れていくだけだった。
「すまん…落ち着け、キャメル…
俺もすぐに向かう。合流地点は追って連絡する…」
『わ、分かりました…』
赤井は沖矢に顔を変えながら、ルナの位置情報を検索する。
(ここで途切れているな…俺が気づいていれば…)
そこを合流地点に決め、経度と緯度の座標を確認すると
キャメルにメッセージで送信した。
「……?この数字……、見覚えが……
まさか、あのメモ…!!」
安室がそよ香に残していった2枚のメモを取り出す。
『35284121』
『1386211252』
(そうか、そういうことだったのか…!
安室君、君という男は…)
やっとあの数字の真相にたどり着いたが
今はそよ香を取り戻すことが先決だ。
グレーのハイネックの上にショルダーホルスターをつけ、
ハンドガンを一丁しずめる。
上から紺地に細い白のストライプが入ったジャケットを羽織ると
マスタングのキーを持ち、沖矢は工藤邸を出て行った。