【沖矢昴・安室透夢】 Madeira〜琥珀色の姫君〜
第9章 渡さない*
「や、やめて…くださ…い」
眉は八の字に下がり、
濡れた大きな瞳から一粒、また一粒と涙がこぼれる。
「あぁ、そんな顔をしないで下さいよ。
まるで僕がいじめているみたいじゃないですか…」
ちゅ、ちゅ、と音を立ててそよ香の鎖骨に
優しくキスをする。
「…っ、ん、」
「ねぇ…マデイラ?」
「……!!な、なん…で…?」
安室の口から、聞きたくもない名前が出てきた。
スモークブルーの瞳はそよ香の心臓を突き刺すような
冷たい目をしている。
「僕のコードネームはバーボン…
内偵調査が得意なんですよ。
あなたがマデイラだったなんて…驚きですね」
「……こ、殺すの?」
身体の奥は未だに熱いが、
バーボンの言葉にゾクゾクと寒気がする。
「まさか…あなたを殺したら僕まで殺されてしまいます。
命は惜しいですからね。
今日はあなたに首輪をつけにきただけですよ…」
安室の濡れた舌先がそよ香の首筋を這うと、
一瞬、ピリついた快感が走る。
「んっ!」
「おいでと呼んだらすぐに駆けてくる、
犬の首輪をね…」