【沖矢昴・安室透夢】 Madeira〜琥珀色の姫君〜
第9章 渡さない*
そよ香をベッドに下ろすとギシッと大袈裟に軋む。
羽織っていたジャケットを脱がし、ハンガーにかけた。
「目を覚ましたら…楽しみだな、マデイラ」
閉じたまぶたにキスを落とすと、
安室は車に荷物を取りに戻った。
「んん…は、ぁ…」
異様な体の熱さに不快感で目が覚める。
じっとりと汗が滲み出てブラウスの下に来ているキャミソールが
ひんやりと冷たい。
(な…なに?)
寝返りをうち、横向きになって目を開けると
ソファに座っている安室がいた。
「あ、むろ…さん、」
「目が覚めましたか」
ニヤリと笑う瞳はいつもと違う。
「車の中で眠ってしまわれたので、僕の家に連れてきました。
どうされました?苦しそうですが…」
横になったまま、シーツをぎゅっと握る手にも汗がこもる。
ただ身体が熱いだけで、だるさや悪寒はない。
寝ていただけなのに何故か心拍数が上がっていて、
呼吸が速く、荒くなっていた。
「はぁ…身体が、熱くて…っ」
ベッドに近づき、狭いシングルベッドに安室は腰をかける。