【沖矢昴・安室透夢】 Madeira〜琥珀色の姫君〜
第9章 渡さない*
「安室さん助かりました!メニュー、一緒に考えていただいて」
「いえいえ、これくらいお安い御用ですよ。
あ、そうだ」
2人で車に乗ると、安室は後部座席に置いたスーパー袋を
ゴソゴソとあさる。
「どうぞ。先ほど買うのを迷っていたようだったので」
アイスカフェモカの入ったカップにストローを挿すと
そよ香に手渡した。
「わぁ、ありがとうございます!安室さんはなんでもお見通しですね」
そよ香がストローに口をつけるのを確認すると
安室は車を発進させた。
「ん、おいしー!安室さんも一口飲みます?」
「いや、僕も自分用にもう一つ買ってあるので大丈夫ですよ」
駐車場を出てから、2台後ろに見覚えのある車がつけてきている。
(…ドイツ系の彼か)
赤信号で停まり、助手席のそよ香を見ると
カップを片手に俯いていた。
「そよ香さん?」
そっとカップを持つと軽く、中は空っぽのようだ。
顔にかかった髪をすくうと、そよ香のまぶたは閉じられている。