【沖矢昴・安室透夢】 Madeira〜琥珀色の姫君〜
第9章 渡さない*
「えっ見てたんですか!?」
そよ香は両手を頬に当てて顔を隠した。
恥ずかしそうに俯く彼女に安室は笑う。
「…フフッ、大丈夫ですよ。ご自宅まで送りましょうか?」
「あ、今日はこれからスーパーに寄って行きたいんで…」
「奇遇ですね、僕もちょうど買い出しに行くところだったんですよ。
ご一緒してもよろしいですか?」
そよ香が「はい」と返事をすると
安室は近くの駐車場に車を停めに向かった。
「夕飯のメニューは決まっているんですか?」
「いえ、まだ…元気の出るメニューにしようかと」
スーパーの入り口でカートにカゴを乗せながら言う。
「おや、お疲れなんですね」
「あ、私じゃなくて…」
「…沖矢、昴さん?」
安室の声が一段低くなる。
あの件以降、直接会ってはいないが疑いが晴れたわけではない。
「沖矢さんのことご存知なんですね」
「まぁ、コナン君の知り合いは僕の知り合いでもありますから」
いつものキラースマイルを向けると
二人は野菜コーナーから回り始めた。