【沖矢昴・安室透夢】 Madeira〜琥珀色の姫君〜
第9章 渡さない*
もう少しだけタオルケットをめくると、
いつも首元を隠すようにシャツの第一ボタンまで
しっかりと止めている沖矢の首元が
今日は見えている。
(ん?黒い、チョーカー?)
沖矢の首には見たことのない模様が描かれた
チョーカーが巻かれている。
そよ香は手の甲を首にあてようと身体を乗り出した。
「…おはようございます。
恥ずかしい姿を見られてしまいましたね…」
「わぁっ!?お、起きてたんですか!?」
伸ばした左手の手首を優しく掴まれたかと思うと
指をからめてきゅっと握られる。
「小さい手、ですね…」
眼鏡をはずした沖矢を見たのはこれで2度目だ。
まどろむ瞳はどこか魅惑的でもあった。
握られた手は沖矢の体温と合わさり、心地よい。
「だ、大丈夫ですか?どこか具合でも…?」
「大丈夫ですよ。昨日は徹夜をしてしまって。
さすがに若いころのようにはいきませんね。
ご心配をおかけしてすみません」
沖矢が身体を起こすと自然と手がほどかれる。
「沖矢さん、その首の…なんですか?」