【沖矢昴・安室透夢】 Madeira〜琥珀色の姫君〜
第1章 点と点
「ありがとうございました」
「いえいえ。
今週の土曜日、よろしくお願いしますね」
「分かってます!どうせ彼女とデートなんでしょ!」
ぷいっとむくれてそっぽ向いてみる。
「違いますよ…ん?
そよ香さん、少しじっとしていてください」
「??」
安室の端正な顔が近づいてくる。
健康的な褐色肌に、アクアブルーの瞳。
ブロンドヘアは夜だというのに
そよ香の視界の端にキラキラと映った。
本人に聞いたことはないが、ハーフだろうか。
(近い近い近い〜〜!!)
お互いの息遣いが聞こえそうな距離に驚き、
とっさに目をつむる。
「はい、取れましたよ。
髪に糸くずがついていました」
うっすらと目を開けると
安室が白い糸をつまんでいた。
ニッコリと笑う彼に、そよ香は不覚にもときめいてしまう。
「も〜〜〜!!!
天然人たらし!!おやすみなさい!!」
耳まで赤い顔で安室を睨みつけると
高級車のドアをバタン!と力一杯閉め、
小走りにエントランスへ入った。
自動ドアのキーロックを開け、そよ香が見えなくなるまで
安室はその場で見守る。
「…いつになったら僕に気がついてくれるんだ。
琥珀色の姫君は…」