【沖矢昴・安室透夢】 Madeira〜琥珀色の姫君〜
第1章 点と点
そよ香の住むマンション周辺は
盛んに土地開発がなされ、
空き家は潰され更地になり、買い手を待つ空き地が点在していた。
そのためかまだこの通りは街灯がなく、
暗くなると近所の住人でもここを通る人はほとんどいないが、
そういう場所にはいわゆる“悪い人” が集まりやすい。
車の中から空き地をみると
どう見ても未成年であろう少年たちが
タバコを吸いながらたむろしている。
安室たちの乗る車がその空き地を
通り過ぎようとしたその瞬間、
吸い殻や石を投げつけ、大声で威嚇してきた。
「そよ香さんこの道は危険ですから
一人で通ることは絶対にしないでくださいね」
「はい…あ、安室さんこの辺で良いですよ」
「いえ、エントランス前まで行きます」
コンビニでスイーツを買ってもらい、
ちょっと雰囲気も戻ったかな?と思ったのも束の間
また安室は押し黙って眉間にシワを寄せている。
いつもなら他愛ない話を安室から振ってくれて
楽しい帰り道なのだが。
(今日はあんまり喋らない方がいい気がする…)
そんなことを考えている間に
車はエントランス前に到着していた。