【沖矢昴・安室透夢】 Madeira〜琥珀色の姫君〜
第8章 メモリー
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「あら、珍しいわね…秀吉と手を繋いでいるなんて…」
「まぁ、たまにはな」
約束の時間に待ち合わせ場所に向かうと
既に母と叔母が待っていた。
抱いていたマデイラを降ろすと
エレーナのもとへ駆け寄っていく。
「秀一君、秀吉君ありがとうね。
マデイラちゃん、楽しかった?」
「うん!」
エレーナに聞かれ、向日葵のような笑顔になるマデイラを見て
秀一はやっと安心した。
「じゃぁ、お兄ちゃんたちにバイバイしようか」
「…バイバイ?」
その言葉を聞いた途端、
マデイラの表情が曇り、秀一の足にしがみつく。
兄弟は地面に膝をつくと幼さの残るレディの手をとった。
「マデイラ、そんな顔をするな…またきっと会える」
「僕たちのこと、忘れないでね」
秀一と秀吉が交互にマデイラの頬にキスをすると
くすぐったそうに笑ってエレーナの元へ戻っていく。
「バイバイ、また遊ぼうね」
百合のように可憐な少女は、
何度も振り返りながら手を振り、帰っていった。