【沖矢昴・安室透夢】 Madeira〜琥珀色の姫君〜
第8章 メモリー
「マデイラ、すまなかった。まだ目を開けるな…
ちょっと痛いぞ」
口に貼られたガムテープを一気にはがし、
ひもで縛られた両手足を解放する。
抱き上げると閉じた瞳からぽろぽろ涙をこぼしながら
しがみついてくる。
「兄さん!兄さん!係員さん連れて来たよ!」
ドアを激しく叩く音と共に秀吉の声が聞こえた。
トイレから出る前にもう一度男の腹を蹴り上げる。
「…チッ」
男の醜悪な行為と、マデイラを守りきれなかった悔しさで
怒りの感情を抑えることはできなかった。
*
*
*
「マデイラちゃん、大丈夫…?」
秀吉が今にも泣きだしそうな顔で聞く。
「見たところ、外傷はなさそうだが…」
秀一に抱かれたまま離れないでいるマデイラからは
途切れ途切れの息遣いだけが聞こえる。
肩のあたりが彼女の涙で濡れる感覚がするが、
今はそんなこと、どうだっていい。
シルクのようになめらかな髪に指を通し、頭を撫でる。