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【沖矢昴・安室透夢】 Madeira〜琥珀色の姫君〜

第8章 メモリー




「あとここだよ、兄さん…」

「分かった。秀吉、俺が入って5分経ったら係員を呼んで来い」

「うん…」



秀一はバリアフリートイレの引き戸の前に立ち

ドンドン!と扉を叩く。



「おい!誰か中にいるか!?火事だぞ!逃げろ!!」



細いすりガラス越しに誰かが近づいてくるのが分かる。

カチャッと鍵が開き、

戸がスライドされるとわずかな隙間から秀一は中に抜けていった。


「な、なんだテメェ!!」


30代ぐらいの男が秀一に向かって怒鳴り散らす。

男の向こうには手足を縛られ、

口をガムテープで塞がれたマデイラが床に座らされていた。

琥珀色の瞳は涙で揺れている。



その姿を見た瞬間、

秀一の中で理性の途切れる音がはっきりと聞こえた。

腹の奥底から黒く熱いものが湧き出てくる、そんな感覚だ。




「マデイラ、目を閉じろ。

俺が良いと言うまで開けるなよ…」



「うるせぇぞガキが!!!」



男が秀一を掴みかかるその一瞬前に、

身体を左にねじり、よける。



「You want to die...(死にたいようだな)」


男の伸びた腕を横から掴むと

更に引っ張り、バランスを崩した背中に足をのせて

硬いタイルの上に叩きつけた。



「ぐっ…!!」



男は顎を強く打ち付け痛みに悶える。





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