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【沖矢昴・安室透夢】 Madeira〜琥珀色の姫君〜

第8章 メモリー




「トイレの中…?」

「え?」

「トイレの中は見たか」

「掃除中以外の所は全部見たよ!でもいなかった!」

「…!連れていけ!!そこへ!!」



秀吉に向かってこんなに大声を出したことは

後にも先にもこの1度しかなかった。


胸中がざわざわと騒ぎ出すと

いてもたってもいられず、秀吉の腕を強引に掴んで走り出す。


弟の言う通り、空いているトイレにマデイラの姿はなかった。

あとは掃除中の札が立っている2か所だけ。




「秀吉はここで待っていろ。入ってくるなよ」

「…う、うん」



目つき、声色、雰囲気…いつもと違う兄を目の前にして

秀吉は大人しく言う事を聞く。




札の立っている一つ目のトイレは

普通の男子トイレだった。




「おい!火事だ!!逃げろ!!」



秀一はトイレに向かって大声で叫ぶ。



「な、なんだって!?」



中から清掃員の男がブラシを持ったまま

血相を変えて出てくる。


清掃員と入れ替わりに秀一が中に入るが

誰もいなかった。



「ハズレか…」


「あれ、お兄さん?今火事だって声がしなかったか!?」



戻ってきた清掃員が秀一に声をかける。



「そうですか?俺は聞いてませんが…」



何事もなかったかのように

秀一と秀吉はもう一つの札がたつトイレに向かった。



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