【沖矢昴・安室透夢】 Madeira〜琥珀色の姫君〜
第8章 メモリー
「じゃぁ次はこれに乗ろう!
その前に僕トイレ行ってくる!マデイラちゃんは平気?」
「うん、待ってる…」
秀吉の後ろ姿を目で追うマデイラは少し寂しそうだ。
可愛らしい両手で大きなジュースカップを持ち、
ストローで一生懸命に飲んでいるのを見ると
無意識のうちに頭を撫でていた。
「楽しいか?マデイラ」
秀一の手に気づき目が合うと、
マデイラの頬は少しだけチェリーピンクに染まる。
「うん、とっても楽しい!シュウは?」
「あぁ、俺もだ…」
嬉しそうに笑う少女を、
ずっとそばで見ていたいと思った。
ふと気が付くと、数メートル先の広場に人だかりができている。
うさぎの着ぐるみが子どもたちに風船を配っていた。
「あっ!うさぎさん!!」
急にマデイラが椅子から飛び降り、走り出す。
「…!おい、待て!マデイラ!!」
秀一の声も聞かず、
小さな体はするすると大人たちの間を通り抜け
人の波に飲み込まれていく。
必死に追いかけるが、あっという間に見失った。
「しまった…」
マデイラの目当てはあのうさぎだと分かっていたため、
なんとか人をかき分け着ぐるみに近づく。