【沖矢昴・安室透夢】 Madeira〜琥珀色の姫君〜
第8章 メモリー
「…そう。あのマデイラって子、研究に関係あるの?」
「ごめんなさい、あの子のことは無闇に話せないのよ…
でもあの子生まれた時からずっと研究所にいるみたいで。
明美と同じくらいの歳だからどうしても気になっちゃうの」
「…気をつけなさいよ。烏丸グループの噂は
内部にいるあなたが一番よく分かっているでしょう…」
エレーナは困ったような笑顔でこう言った。
「心配性ね。大丈夫よ、私には守るものがあるから」
*
*
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「マデイラちゃん、次は何乗る?」
「えっとね…」
少し遅い昼食をとりながら
秀吉がアトラクションの載ったリーフレットを
マデイラに見せる。
「秀吉、マデイラは俺が見ておくから
自分の乗りたいものに乗ってきて良いんだぞ」
先ほどから秀吉はマデイラの身長でも乗れる乗り物にしか
乗っていなかった。
ジェットコースターのような身長制限のあるものを
我慢していると思ったからだ。
「ううん、僕マデイラちゃんと一緒にいたいから良いんだ。
妹が産まれたらこんな感じなのかな
きっとすっごく可愛いだろうな」
俺なんかより秀吉の方がよっぽど兄らしい、と
その言葉を聞いて思った。