【沖矢昴・安室透夢】 Madeira〜琥珀色の姫君〜
第8章 メモリー
下から見上げるマデイラの顔の小ささに秀一は驚く。
琥珀色に輝く瞳は、人を惹きつける不思議な力があるようだ。
「もう一度聞くが、このアザはどうした?」
できるだけ優しい声色で言ったつもりだ。
「…お父様が、マデイラは特別な子だから、
みんなに血を分けてあげないといけないって言うの」
「血を、分ける…?」
7歳の少女からゾッとするような言葉が吐き出される。
秀一は、あのアザがこの小さな体から血を抜くための
注射針の痕だと気づいた。
「うん、だから毎日お注射するの。
でも、マデイラ痛いの嫌い…」
マデイラは秀一の胸に顔をうずめ、ぎゅっと目をつむる。
自分の膝の上でか弱く震える天使を抱きしめると、
お父様と呼ばれる奴に怒りすら覚えた。
「マデイラちゃん、大丈夫だよ。
僕も兄さんもマデイラちゃんの嫌がることはしない」
「…ほんと?」
「本当だよ!じゃぁ、何から乗る?」
秀吉の元気な笑顔につられて
マデイラも笑顔を取り戻す。
「お馬さん乗りたい!」
「お馬さん?あ、メリーゴーランドのことかな?
よし、行こう!兄さんも!」
秀吉はマデイラと秀一の手を握るとグイグイと
ひっぱった。