【沖矢昴・安室透夢】 Madeira〜琥珀色の姫君〜
第8章 メモリー
(小さい手だな…)
右手の中指と薬指をきゅっと握られ、
下を見るとマデイラと目が合う。
「なんだ…?」
「ちょっと兄さん!そんな怖い顔しないでよ!」
「…悪かったな、この顔は生まれつきだ」
メアリーと落ち合う時間まであと5時間はある。
浅草にある子ども向けの小さな遊園地に
3人は向かうことにした。
「母さんからお金を預かってきたからな。
フリーパスにしよう。どうせいろいろ乗りたいだろう」
「やったー!マデイラちゃん、いっぱい乗ろうね!」
「うん!」
秀一と秀吉の手を握ってぴょんぴょんと
マデイラは跳ねる。
スカートの裾がふわふわと舞い、少女の可憐さが際立つ。
秀一が係員からフリーパスを3枚購入した。
「大人1枚、小人2枚ですね。リストバンドをつけるから
腕を出してもらえるかな?」
言われるがまま兄弟は係員に腕を出すと
紙でできたリストバンドを手首にまかれた。
「ほら、マデイラも腕を出せ…」
秀一は片腕で軽々とマデイラを抱き上げると
係員の高さに合わせる。
「…ゃ」
「どうした」
「いやっ」
マデイラは秀一の首にしがみつき、小さく震えている。
「…すみません、この子のリストバンド俺がつけておきます」
「そうですか。乗り物に乗るときは必ずつけてね」
「分かりました…」