【沖矢昴・安室透夢】 Madeira〜琥珀色の姫君〜
第8章 メモリー
小さな子どもが
エレーナの服を握り後ろに隠れている。
「この子はね…ほら、ご挨拶は?
さっき、練習したのよね?」
もじもじしながら現れたのは
胡桃色の長い髪に少しウェーブのかかった女の子。
真っ白いワンピースに、真っ白い素肌
桃色に染まった頬と唇がまるで可愛らしい人形のようだ。
「は…はじめまして…マデイラ、です…」
秀一と秀吉を交互に見ると
またエレーナの後ろに隠れてしまった。
「マデイラちゃん、よくできたね!
今日は2人のお兄ちゃんが遊んでくれるのよ」
そう言うとエレーナは秀一と秀吉の手を取り
マデイラの小さな手を握らせる。
「2人とももうすぐ妹が生まれるんだから
少しは女の子の扱いに慣れていたほうが良いでしょう?」
サングラスの下でメアリーの瞳が笑う。
(母さん、最初からそのつもりだったな…)
母の思惑に気づき、はぁ、とため息をつく秀一をよそに
「マデイラちゃん、今いくつ?可愛いね」
「…7歳…ありがとう……」
と、秀吉は早くも楽しそうに会話をしている。
「じゃぁ、私たちは積もる話があるから…
16時にここで落ち合いましょう。
秀一、秀吉、頼んだわよ」
よく似た姉妹はそのまま浅草の人ごみに消えていった。