【沖矢昴・安室透夢】 Madeira〜琥珀色の姫君〜
第1章 点と点
ニコッといつもの笑顔を向ける安室をみて
そよ香は心底ホッとした。
「えっヤッター!
今日発売の、中までチョコたっぷりエクレアが良いです!」
「本当にチョコがお好きですね…おっと電話だ。
先に入っていてください」
「はーい♪♪」
電話に出るフリをして、安室は店内の様子を確認する。
(怪しいやつは…いないな。
ポアロから僕たちをつけていた車も
一度はコンビニに入ってきたけど
もう出て行ったし…
あいつがそよ香さんのスマホに
位置情報追跡アプリを入れたんだな…
社内のやつか?…面倒だ。
extraction…抽出、ねぇ…
まぁ僕がそのアプリを消したから
こうやってつけてきたんだろうけど…)
コンビニの入り口から
一直線にスイーツコーナーへと進むそよ香
「あった!最後の一個だ!」
ロールケーキ、プリン、シュークリーム…
そんな王道のコンビニスイーツには目もくれず
新発売のシールが貼られたそれに手を伸ばす。
「あっ」
「おや」
エクレアを掴んだはずが、
何故か男の人の手を掴んでいた。
「わっっ!!ごめんなさい!!」
「いえいえ、構いませんよ。
貴女もこの新作エクレアを買いに?」
「あ…はい。でもあなたの方が先だったので!
どうぞ!!」