【沖矢昴・安室透夢】 Madeira〜琥珀色の姫君〜
第1章 点と点
「あの…安室さん?
どうかしましたか?」
ミラーを見る安室の目は、どこか険しかった。
「あ、いや…すみませんが、
コンビニに寄っても良いですか?
実はトイレに行きたくて…」
「良いですよ。私は車で待ってますから」
近くのコンビニに入るが、
安室はキョロキョロと辺りを見回し、
すぐには車を降りなかった。
「あ…あの?」
「そよ香さん、
今日何か変わったことはありませんでしたか?」
両肩を掴まれ、安室の方を向かされる。
いつものニコニコとした優しい雰囲気の彼はいない。
シン…とした車内は重い空気をまとっていた。
「えっと…急に言われても…」
「例えば、持ち物がなくなっていたとか」
ほんとになんなの…?
二重人格なのではないかと疑うほど
今の安室は怖い目つきをしている。
全てを飲み込もうとする、深海のような
暗いブルーの瞳。
「…そういえば、カバンに入れたはずのスマホが
上着の右ポケットに入ってたり、
電池が急になくなったり…そのくらいでしょうか」
「……なるほど、、
いや…僕の勘違いだったみたいです。
すみません、変なことを聞いてしまって。
驚きましたよね。
お詫びにそよ香さんの好きなスイーツを
お一つプレゼントしますから、
一緒に中に来てもらえますか?」