【沖矢昴・安室透夢】 Madeira〜琥珀色の姫君〜
第7章 パフォーマンス
ひょうひょうと語る口調は
彼のコードネームがライだったころと何も変わらない。
しかし、ある言葉を前にして奴は口ごもる。
『彼のことは…今でも悪かったと思っている…』
一瞬で安室の思考は沸騰した。
スマートフォンを強く握る手は震え、
奥歯を噛み締めるとギリギリと脳内で響いた。
もし今、奴が目の前にいたら自分は何をしていたか分からない。
『降谷さん、どうしますか?追いますか?』
「…これ以上の深追いは危険です。撤収してください…」
部下の声が聞こえ、何とか降谷零を演じる。
通話を終え、沖矢の方を見ると工藤優作のスピーチを見終え
ソファーでくつろいでいた。
「…どうもすみませんでした。僕の勘違いだったようで…」
「いえいえ、構いませんよ。謎解きも楽しかったですし」
余裕たっぷりに言う沖矢はどこか憎たらしい。
「…失礼ついでに、もう一つお伺いしても?」
「えぇ、どうぞ…ゴホッ」
目の前の沖矢は一度咳払いをした。