【沖矢昴・安室透夢】 Madeira〜琥珀色の姫君〜
第1章 点と点
毛利探偵事務所のドアを開けると
身体に一瞬力が入ってしまうほどの冷たい空気に包まれた。
ポアロに預けてきたスマホを取りに戻ると
安室が閉店の準備をしている。
「安室さん!さっきはすみませんでした。
充電できてますか?」
「できていますよ。
もうあがれるので、良ければ家まで送りましょうか?」
「えっ良いんですか?じゃぁそうしてもらおうかな」
安室はポアロの鍵を閉めると、
車を回してくるからここで待つように
とそよ香に伝えた。
しばらくすると高そうなスポーツカーが目の前に停まる。
車の中から「おいで」と手招きする様は
さながらイケメン俳優のようだ。
「お、お願いします…」
「スマホはちゃんと持ちましたか?」
「あ、はい!電池も100%になってたので
大丈夫だと思います」
「…それは良かった」
ポアロからそよ香の自宅までは車で10分少々。
基本的に大通り沿いを走れば良いので
何も迷うことはない。
安室には何度か家まで送ってもらったことがある。
しかし、今日はいつもと違った。
安室はしきりにバックミラーやサイドミラーを
気にする素振りを見せる。