【沖矢昴・安室透夢】 Madeira〜琥珀色の姫君〜
第7章 パフォーマンス
「どうされました?
少し、顔が赤いようですが」
「な、なんでもありません!
シャワーを浴びてきたので、暑いだけですっ」
とんでもなく下手な嘘をつくと
そよ香は目の前に置かれた食事に手を付ける。
今日は肉じゃがだ。
そよ香が食べている間も
沖矢はキッチンから出ていこうとはせず、
インスタントコーヒーを淹れると
そよ香の隣に座った。
「そよ香さん、明日のご予定は?」
「特にありませんけど…」
「それは良かった。今、杯戸デパートで
世界のチョコレートフェアを開催しているんですよ。
一緒に行きませんか?
来週は用事があって、どこも連れて行けそうにないので」
この人は一体どういうつもりで誘ってきているのか
そよ香には見当もつかなかった。
さっきまであんなことをしておいて、
顔色一つ変えず、何事もなかったように接してくる。
こんなにドキドキして、意識してしまっているのが
自分だけだと思うと癪に障る。
そよ香も平静を装って
「はい、楽しみです」
といつものように返事をした。