【沖矢昴・安室透夢】 Madeira〜琥珀色の姫君〜
第7章 パフォーマンス
浴室の鏡に映った自分の姿を見ると、
首筋や胸、お腹…あらゆるところに
深緋色の証が散っている。
シャワーをかけても、ボディソープで洗っても
当たり前だが消えることはない。
数日間はこの証を見るたびに
あの甘くて濃厚な刺激に振り回されるのかと思うと
身が持たない気がした。
小腹が減ってキッチンへ向かうと、
今度はこちらのドアの隙間から明かりが漏れている。
(沖矢さんいるのかな…)
ドアの前で数秒立ち止まったが、
食欲に勝てずドアノブを回した。
「そろそろ起きてくるころかと思いまして、
食事を温め直しておきましたよ。
召し上がりますか?」
にこにこといつもの笑顔を向けてくる沖矢に
どぎまぎしながらも
そよ香は頷き、カウンターテーブルに近づいた。
椅子に腰かけると、沖矢の細くて長い指が目に入る。
(だめだ…心臓がもたない…)
思い出すなと言われても無理がある。
徐々に顔が火照ってくるのが分かった。
今、この顔を沖矢に見られたら
どう思われるだろうか。