【沖矢昴・安室透夢】 Madeira〜琥珀色の姫君〜
第6章 一歩先*
「そよ香さん、また風邪をひきますよ」
「ん…」
少し肩を揺らすと、
そよ香はゆっくりと目を開ける。
「あれ…沖矢さん。帰ってたんですね」
ふぁ…とあくびをするそよ香の瞼は
まだ半分しか開いていない。
「僕が出て行ったあと、誰か来ましたか?」
「…えっと、あれ?覚えてない…です」
「一つずつ、順番に思い出しましょう。
僕が出かけてからは何を?」
そよ香は目をこすりながら
沖矢の言葉を必死に聞こうとする。
「ここでテレビをみてました」
「それから?」
「チャイムが鳴って…」
「それはどなただったのでしょう?」
突然そよ香の歯切れが悪くなる。
目を閉じて思い出そうとしている様子だが、
一向に言葉は出てこない。
「…まぁ、そういう事もありますよ。
夕食ができるまで、もう少しベッドで横になりますか?」
そよ香は困惑した目で沖矢を見つめるが
素直にうなずいた。