【沖矢昴・安室透夢】 Madeira〜琥珀色の姫君〜
第6章 一歩先*
少しだけ日が傾き始めたころ
食材でいっぱいになったスーパー袋をもって
沖矢が帰宅した。
「おや…」
リビングにはソファに横たわるそよ香の姿がある。
食材を冷蔵庫に入れようと
キッチンへ入ると、言いようのない違和感が襲う。
食器棚を開けるといくつかのティーカップが並んでいるが、
2組だけ取っ手の向きが反対になって置かれていた。
カトラリーの入った引き出しも見てみると
デザート用のフォークが2本、少しだけ濡れている。
「…来たか」
夕食の下ごしらえは後回しにして、
沖矢は家中を調べることにした。
「よくもまぁ、こんなにも仕掛けたものだな…」
バケツに水を張り、
ジャラジャラと黒い小さな機械を落としていく。
回収したものを数えると18個は見つかった。
安室とは違い、そよ香の部屋に躊躇なく入った沖矢は
サイドテーブルにつけられたそれも
見つけてはいたのだが、
あえて取ることはしなかった。
(…おもしろい)
何かを企むように笑うと、
沖矢はリビングに戻った。