【沖矢昴・安室透夢】 Madeira〜琥珀色の姫君〜
第6章 一歩先*
ソファに倒れるようにして眠ってしまったそよ香に声をかける。
辛くない体勢に動かしてやると、
安室は自分の額をそよ香の額に優しくつける。
「…すまない」
心から詫びの言葉をこぼすとリビングを後にした。
書斎や寝室、いくつかあるゲストルームに
安室は盗聴器をつけて回った。
ある部屋を開けた時、そよ香の使っているところだと分かり
申し訳ないと思いながらも1つだけサイドテーブルの裏に
それを取り付ける。
(いよいよだな、赤井秀一
ぐうの音も出ないほどにお前を追い詰めてやる)
腕時計を確認するとリビングを出てから
30分は経ってしまっていた。
「おっと…そろそろ引き上げるか」
もう一度リビングに戻ると
スヤスヤとそよ香は寝息を立てている。
顔に落ちた髪をすくい、耳にかけると
黒く長いまつげが現れた。
このままさらってしまおうか、
そんな考えが浮かんでは消えていく。
「…君を守って見せる」
そよ香の薄桃色の頬にキスをすると
安室は静かに工藤邸を立ち去った。