【沖矢昴・安室透夢】 Madeira〜琥珀色の姫君〜
第6章 一歩先*
(…今のうちに)
安室は持参してきた盗聴器をいくつか
リビングに設置した。
(まぁ、すぐにバレるとは思うが…)
赤井秀一を追い詰める最後のピースは揃っていたが
念には念を入れて少しでも情報が欲しかった。
そんなに簡単にボロは出さない奴だと
分かってはいるのだが。
「お待たせしました」
「ありがとうございます」
ストロベリーのいい香りが鼻孔をくすぐる。
「安室さんならチョコケーキを持ってきてくれると思って
ストロベリーティーにしました」
「さすがそよ香さん、当たりです」
ケーキをつつきながら二人は他愛のない会話を続けた。
安室は沖矢と違っておしゃべり好きだ。
次から次へところころ話題が変わるが、
話は尽きることがない。
話すのも上手いし、相手から聞き出すのも上手い。
しばらくするとそよ香からの返事が
途切れ途切れになっていった。
「…そよ香さん、そよ香さん」